ハンバーガーゲーム

虚無が有る、という矛盾。人間が生まれた瞬間から動物的自己防衛本能として備わっている恐怖心は「高い所から落下する」「大きな音に驚く」この二つだけだと聞いた。現代、街中でライオンに襲われることはないが、自分の身は守れているのか、それとも檻に"守られている"だけなのか。文明が矛盾を孕んだ

 


結果、檻の中で培養された言葉、通貨を使って俺たちは半強制的にゲームに参加させられている。檻の明確な意図や制作者の顔・素性も知らないまま、何となく安全や安心を大義名分にエアコンの効いた部屋でハンバーガーを頬張る。隣人よりもパティを重ね、アボカドやチーズ、パイナップルをトッピングする

 


そして、デコレーションされ続けた人生ゲームでは「他人よりも高く積んだハンバーガー」という比較でしか、幸せの判断ができない。カロリーオーバーを医者に指摘されても俺たちは俺たち自身をコントロールすることができない。なんて不自由で滑稽な生き物なんだろう。果たして、それは"生きている"のか

 


自分で作り上げたように錯覚するハンバーガー。そのてっぺんから「落下する恐怖」と「大きな音を立てて崩れ去る」幻想に怯えながら、檻の中で一生を過ごす。最初からそこに"何もなかった"はずなのに絶望する。俺たちは毎日、今この瞬間も絶望感を味わうために追加オーダーを続けているのかもしれない。