背中たち

先日、鎖に来た超怪しい客が自分の中高を共にした同級生だと気付くまで、お互い時間はかからなかった。


まさかの展開にどちらも驚いたが、不思議なもので「あいつ覚えてる?」って話を名前で振られると意外と顔まで思い出す。

おおよそ、20年以上ぶりに偶然の再会をしても、(お互い風貌は変わったとは言え)その当時の空気感、話のテンポが掴めるものだ。

同じマンションに住んでたヤンキーの話
いつも溜まり場だった友達の母ちゃんが亡くなって、少し疎遠になってしまったその後の話
どちらかと言うとオタク・ゲーマー気質だったあいつが、隣の中学で人を刺したとか噂になって
一気に要らない知名度を上げたけど、公園で髪の毛燃やされた話とか

今も変わらずそこに住んでるやつや
同じクラス同士で結婚したカップルとか

俺は、中2で剣道からエレキギターに目覚めてしまったので、自分でも残酷なほど周りが見えなくなったし、友達付き合いの殆どがなくなった。

その彼から、当時の俺はどう見えてたのか、少し気になったけど、まあ、こうして時を経て会えたことに意味があるのなら、お互いのこれからをちょうど良い距離感で過ごしていたい。

溜まり場だった部屋に、あいつも俺もいて、生きていたおばさんが出してくれたカールやポテトチップスを摘みながら、脂ぎった指先でスーパーファミコンのコントローラーを握っていた背中たちが今も見える。

昔から、俺たちは待ち合わせなんてしなかったもんな。